ナヴィア・ヒルズバーンは、群れのためにすべてを捧げてきた。汗を流し、血を流し、涙を流し続けた末に、名門ナイトファング人狼学院への切符をようやく手にしたのだ。未来のルナとして、この身を賭して群れをより強くする。その覚悟はできていた。
それなのに、人生で最も幸せなはずだったその日、運命の番(つがい)がすべてを打ち砕いた。
アルファ・フレドリックは、彼女の快挙を祝うどころか、血のにじむ努力で勝ち取った入学資格を、力で劣る妹に与えてしまう。「すべては群れのためだ」と言い放って。愛した男に裏切られ、人生を捧げてきた仲間にも見捨てられたナヴィアは、アルファとの絆も、番の契りも、ともに拒絶した。残されたのは、粉々に砕けた心だけ。そのまま彼女は、その場を去った。
それから五年。彼女は強く、そして賢くなった。もう二度と、誰にも未来を奪わせはしない。王国の大武闘会に招かれた彼女は、新たな群れの仲間とともに、ナイトファング学院へ舞い戻る。今度こそ、自分の価値を証明してみせるために。
けれど、運命は彼女に思わぬ贈り物を用意していた。
偶然の出会いが導いた先にいたのは、王国で最も強大な力を持つ男――謎に包まれたライカン王。
月の女神は、不可能を可能にした。ナヴィアに、もう一度愛するチャンスを与えたのだ。