たった一夜が、エロウェン・シモンの夢を打ち砕き、彼女の人生をおとぎ話とは似ても似つかぬものへと変えてしまった。
奨学金の祝賀会に出席したエロウェンは、恋人ジャンの裏切りを知って、心を粉々にされていた。その夜、彼女は生涯でたった一度の過ちを犯す。相手は、フランス最大の財閥を継ぐ、誰もが憧れる権力者の御曹司、アレクサンドル・モルセル。翌朝、彼女の姿はもうどこにもなかった。名も知らぬ男のことは、何ひとつ残さず忘れてしまおう。そう心に誓って。だが数週間後、彼女は恐ろしい事実に気づく。身ごもっていたのだ。
それから五年。唯一無二の腕を持つ料理人となったエロウェンは、アレクサンドル・モルセルの専属シェフとして、フランスへ舞い戻る。連れてきたのは、彼女の三人の子どもたち。その父親がアレクサンドルであることを、本人はまだ知らない。二人は互いに、あの夜の相手だとは気づかない。けれどやがてアレクサンドルは悟る。自分が本当に「味」を感じられるのは、この女性の料理だけなのだと。そして、理由もわからないまま、彼女に惹かれていく自分に気づく。
だが、恋に落ちることなど、まだ始まりにすぎない。両親の死にまつわる真実は、二人を結びつけるのか。そして、彼女を転落へ追いやった一族の裏に潜む、本当の怪物たちを暴くことになるのか。
二人は世界に立ち向かい、彼女の両親が遺したものを取り戻し、彼女の人生を奪った者たちと対峙できるのか。